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2022-01-18 生物毒素・抗毒素

【論文】日本における過去50年間のヤマカガシ (Rhabdophis tigrinus) 咬傷の発生状況:遡及的調査

聖路加国際大学の一二三副医長と、本講座の髙橋教授、諸熊客員准教授による共著論文が、2022年1月10日にFront. Public Health誌に掲載されました。

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpubh.2021.775458/full

 

下記に論文の概要を記載いたします。

 

Rhabdophis tigrinus (Yamakagashi) Bites in Japan Over the Last 50 Years: A Retrospective Survey

 

Toru Hifumi1*, Atsushi Sakai2, Akihiko Yamamoto3, Kazunori Morokuma4,5, Norio Otani1, Motohide Takahashi4 and Manabu Ato6

 

  1. Department of Emergency and Critical Care Medicine, St. Luke’s International Hospital, Tokyo, Japan,
  2. The Japan Snake Institute, Gunma, Japan,

3,. Management Department of Biosafety and Laboratory Animal, National Institute of Infectious Disease, Tokyo, Japan,

4,. Toxin and Biologicals Research Laboratory, Kumamato Health Science University, Kumamoto, Japan,

  1. Kikuchi Quality Control Department, KM Biologics Co., Ltd., Kumamoto, Japan,
  2. Leprosy Research Center, National Institute of Infectious Diseases, Tokyo, Japan

 

Rhabdophis属の蛇は、インドから東アジア、ロシアに広く分布する毒牙を持つ蛇で27種類が知られています。日本のヤマカガシ (R. tigrinus)咬傷患者の一部では、重篤な症状を呈することが報告されています。しかし、ヤマカガシ咬傷事例に関して、地理的特徴、発生率、咬傷数の経時的変化などの疫学情報を包括的に調査されたことはありませんでした。

本研究では、日本における50年間のヤマカガシ咬傷事例の疫学を明らかにするため、1971~2020年間に日本蛇族学術研究所で集積した患者の記録を精査し、患者の特徴、臨床症状、検査データ、治療関連因子、院内死亡率に関して、抗毒素投与群と非投与群で比較をおこないました。

50 年間の記録では、ヤマカガシ咬傷事例は合計で43件の咬傷事例があり、うち5件は死亡症例の報告でした。1985年以降の重症例には抗毒素による治療が行われましたが、2006年と2020年の2例に死亡例が発生しています。2000年以降、ヤマカガシ咬傷の発生は西日本に多く、抗毒素投与群の死亡率は、抗毒素を投与しなかった患者群よりも有意に低いことが分かりました。

ヤマカガシ咬傷の最終的治療法である抗毒素は現時点では未承認薬であり、ヤマカガシ咬傷患者への重要な治療法である抗毒素は、薬機法下で医薬品として製造販売承認を得る必要性が高いと考えられます。