実験動物を使用しない破傷風毒素活性測定法の新規構築
紀元前4-5世紀ごろ、外傷から筋肉痙攣を起こし死に至る病気として、古代ギリシャのヒポクラテスが古代ギリシャ語でテンション“τετανοσ”と記録しました。これが「破傷風(Tetanus)」の最初の記録です。1889年に北里柴三郎が破傷風菌のみをとりだす嫌気的純粋培養法に成功、翌年には破傷風抗毒素を発見し、血清療法の開発が始まりました。1920年代にはラモンとデスコンビーによって、ホルムアルデヒドを用いた破傷風毒素の不活化、また、ワクチンの力価測定法が開発されています。
力価測定とは、トキソイドや抗毒素の有効性評価に使用される試験で、マウス等の実験動物を大量に用いた毒素攻撃法・チャレンジテストがおこなわれます(図1)。
これまでに実験動物を使用しない有用な評価方法が確立されていないため、トキソイドや抗毒素の有効性評価の現行法は動物試験が今でもゴールドスタンダードとなっています。
1959年に提唱された3Rの法則は、動物実験の世界的な基準理念となっています(図2)。
科学上の理由の目的を達することができる範囲において、動物実験に替わる方法を採用し、実験に使用する動物の数を減らし、また、苦痛の軽減に配慮することを提唱したものです。
現在実施されているトキソイドや抗毒素の力価測定法では、大量の実験動物が必要となるだけではなく、注射した毒素による麻痺等の苦痛を与えています。
本講座では、動物を使用しない細胞ベースのin vitro試験法へ替えるために、破傷風毒素活性測定法の新規構築をおこない、3Rの推進、そして試験法そのものの改良を目指すことを目的に研究を推進していきます。