研究内容 研究内容

海外抗毒素製剤コンパラビリティ調査研究

国内で製造販売しているウマ抗毒素製品について -製造と品質管理の概要ー

 

抗毒素製剤は、北里柴三郎とベーリングによるジフテリアウマ抗毒素の開発に始まり、同じ毒素性細菌である破傷風やガスえそ疾患の患者救命に用いる手段として活用されてきました。

国内では北里柴三郎の門下生らにより、はぶ毒ウマ抗毒素や、まむしウマ抗毒素の開発に成功して現在も治療に用いられています。国内のウマ抗毒素製剤はKMバイオロジクス株式会社1社だけが薬事法の製造販売承認を得て5品目の製剤を製造しています。非常に稀な病気であるボツリヌス抗毒素(単価と四価製剤)、ジフテリア抗毒素、ガスえそ抗毒素は国家買い上げ品として厚生労働省が保管しています。

 

一方、まむしとはぶウマ抗毒素は自由に購入することができます。しかし、救命手段である医薬品を製造する製造所が1社だけしかないことは、国民への安定した供給に対して心配されています。海外でのウマ抗毒素製剤の製造所も、減少傾向にあります。その理由として、上述のようにウマ抗毒素は100年以上前に製造方法が確立され、製造工程、方法は過去に確立されたままの方法であることが挙げられます。

近年、医薬品製造における国際的な管理制度であるGMP(Good Manufacturing Practice)基準の要件を満たすためには、企業は適切な建物や人員を用意するために経済的な投資・改善が必要となりました。ウマの飼育・管理には特別な設備や技術の承継が必要であり、対応ができない企業は廃業に追い込まれました。

 

国際的なウマ抗毒素製剤の需給システムを改善するために、国際機関であるWHOでは製造や品質管理に関する各国政府の役割、国家試験機関や製造所の役割等についてのガイドラインを発出していますが、根本的な問題解決には至っていません。

 

蛇毒咬傷に用いる抗毒素の製造と品質管理に関する資料

・Guidelines for the production, control and regulation of snake antivenom immunoglobulins

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20950580/

・EXPERT COMMITTEE ON BIOLOGICAL STANDARDIZATION Geneva, 17 to 21 October 2016

https://www.who.int/biologicals/expert_committee/Antivenom_WHO_Guidelines_DJW_DEB_mn_cp.pdf

 

ジフテリア患者への抗毒素の枯渇

FIELD GUIDE FOR PREPAREDNESS AND RESPONSE TO DIPHTHERIA OUTBREAK IN THE WESTERN PACIFIC Draft Version  07 May 2018

Expanded Programme on Immunization WHO Regional Office for the Western Pacific

Manila, Philippines May 2018

 

供給リスクの問題回避のため、生物毒素・抗毒素共同研究講座では製剤供給の複線化の可能性を検討するために、海外産抗毒素製剤と国内産抗毒素製剤のコンパラビリティ調査研究を計画しています。両国政府の医薬品製造販売および輸出入規制状況の比較を含めて実施することを研究課題としております。 現在までの調査研究では、中国においてまむし抗毒素とボツリヌス抗毒素を製造している情報があるために、日本への抗毒素の輸出入の規制、製造所情報、品質管理等についての問題点、情報収集のために関連機関・部門との協議を始めています。

 

今後は国内製造ウマ抗毒素製品の全般的な需給体制の問題点と対応方法の立案、品質保証にかかわる製造と品質試験法の改善、国際的な安定的供給の考察等をアカデミアの立場でレギュラトリーサイエンスとして考察していきます。

<<一覧へ戻る