トピックス トピックス
2023-01-20 生物毒素・抗毒素

【講演】『COVID19流行におけるゲノム解析の実情』      国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター長 黒田 誠 先生

2022年12月13日(火)に黒田 誠先生を熊本保健科学大学へお招きし、『COVID19流行におけるゲノム解析の実情』と題して講演会が開催されました。

 

当日は医学検査学科2年次の学生のみなさん、教職員、熊本県内の行政機関、ZOOM配信では九州地方衛研のみなさんを合わせた約150名が参加され、新型コロナが発生して3年間の振り返りを科学的に分かりやすく解説していただきました。

前半は、学生向けに呼吸器感染症の従来型と新型コロナウイルスの違いについて説明していただきました。RNAウイルスの中でも最大のゲノムサイズである新型コロナウイルスは様々な機能を持っており、「無症状」の人が多いことが特徴です。

なぜ症状がないのか?―コロナウイルスは「NSP-1」というタンパク質がインターフェロン(炎症作用のシグナル)を抑え、ウイルスは感染力が維持されます。眠っている状態で発熱しない、症状がないなど隠れる能力が長けているのがSARS-CoV-2です。そのため、従前のヒトコロナ4種と同様にコロナウイルスはこれからも共存する可能性が高く、感染症対策の一つとしてクラスター対策やマスクの着用、“おたがいさま精神“の大切さなどを説明していただきました。後半では、次世代シーケンサー、地方衛生研究所でおこなわれているゲノム解析について、ネットワーク図等を交えながら解説していただきました。

また、現在流行しているオミクロン株は変異の数が多く、人への感染性が増し宿主を超えて他の動物(げっ歯類および鳥類)にも感染する能力を獲得している特徴を挙げられていました。黒田先生は、サーベイランスで現在起きていることを理解していくということが大事であり、変異追跡をゲノム上でおこなうことで現場(地方自治体)とクラスター対策をしながら、今後もコロナ以外の許容できない病原体の終息や情報源としてゲノムは活用できると仰っていました。

最後に、当講座の研究の一環である「破傷風菌」のゲノム解析でも大変ご協力頂いております。

<文責 志多田 千恵>

 

講演中の黒田先生

 

会場の様子