コラム コラム
2021-06-10 生物毒素・抗毒素

生物毒素・抗毒素共同研究講座について

令和元年10月に当共同研究講座は設立しました。熊本には抗毒素やワクチンを製造する化血研*がありましたが、これら生物学的製剤の品質試験法は科学の発展に相応した技術改革が乏しく、過去の産物利用で発展性を欠いていました。

 

この分野の調査研究をおこなう大学が国内にないことを含め、熊本県のアカデミアで研究基盤を作る意義は大きいことから、旧化血研時代から理事長を務める木下理事長より、将来期待できる研究講座作りの提案がありました。国内の抗毒素製剤はKMバイオロジクス(KMB)ですべての製剤が製造されていたため、KMBとは製造と品質管理分野における研究協力体制を築くことを申し出ました。

 

しかしながら、KMBも組織再編直後のことであり、また採算性の乏しい抗毒素の改善・改良の優先順位は低く、さらに国からのCOVID-19ワクチの開発の要請も重なり、抗毒素分野の研究協力は時期を考慮して対応することとなりました。

一方、試験法の改良に関しては、破傷風トキソイドの新規試験法開発を共同研究課題とすることとなり、試験に必要な道具である精製毒素やトキソイド、および抗体の分与を受け、一歩一歩、講座が目指す目標へ進むことができています。

 

生物毒素・抗毒素共同研究講座が設置された熊本保健科学大学は、熊本市街・中心部から北に約10kmの静かな田園地域に位置しており、教育・研究にはまさに適した環境です。毎年1名ずつ、大学院生が研究に参加する状況でもあり、講座としては少数精鋭で研究を推進しています。

さらに学内および学外の研究者との連携を築きながら、「今日仕掛けて、明日来る楽しみ」の実験に日々取り組んでいきたいと考えています。

 

2021.07.01 髙橋 元秀

 

 

*化血研…1945年設立後、生物学的製剤の開発・販売を主力事業としていたが、2015年の不正発覚後、2018年に明治ホールディングス・熊本県企業グループ7社・熊本県庁が出資する「KMバイオロジクス」に製薬事業などの主要事業を譲渡した。現在は研究支援等の公益的事業を積極的に進めている。